適合率と再現率Precision & Recall
選んだ中の本物の割合と本物の中で見つけた割合
- 適合率はそうだと選んだものの中で本物である割合です。空振りがどれだけ少ないかを見る数字です。
- 再現率は本物である中で見つけ出した割合です。見逃しがどれだけ少ないかを見る数字です。
- 二つは**数える対象が違います。**適合率は選び出した束を、再現率は本物の束を下に敷きます。
- 判定の基準を緩めると再現率が上がり適合率が下がります。締めると逆です。二つはシーソーに乗ります。
- どちらを高くするかは性能ではなく、見逃したときと空振りしたときのどちらがより痛いかが決めます。
目次
1たとえで理解する
イベント会場の入り口に金属探知機のゲートが立っています。かばんを持たせて通すと、金属が入っているとピーッと鳴り、その鞄だけ開けて確認します。
今日通ったかばん100個のうち、実際に金属が入っていたかばんは5個でした。ゲートは10個でピーッと鳴り、開けてみるとそのうち4個だけに金属がありました。残りの6個は鍵の束や缶飲料のせいでただ鳴っただけです。
ここから二つの割合が出てきます。ピーッと鳴った10個のうち本物は4個、これが適合率です。実際の金属5個のうち4個を見つけたので、これが再現率です。同じ一日を測っているのに、下に敷く束が違います。
ゲート横の感度つまみを上げると、鳴る回数が増えます。見逃すかばんは減りますが、無駄に開けるかばんも増えます。つまみを下げると正反対になります。
2くわしく
下に敷く束が違う
二つの割合の上の数字は同じです。正しく選び出したものの個数です。違うのは下です。
適合率は選び出したもの全部を下に敷きます。だから無駄に選んだものが増えると値が下がります。再現率は実際に本物だったもの全部を下に敷きます。だから見逃したものが増えると値が下がります。
この違いのせいで、片方だけを見るといくらでも騙されます。すべてのかばんでピーッと鳴らせば、一つも見逃さないので再現率は100パーセントです。反対に確実なかばん一つにだけピーッと鳴らせば、適合率は100パーセントです。どちらも何の役にも立たないゲートです。
つまみ一つが両方を一緒に揺らす
AIはたいてい「金属である可能性0.8」のように点数を出し、その点数がある線を超えるとそうだと判定します。この線が感度つまみです。
線を下げるとあいまいなものまで選び出すので見逃しが減り、空振りが増えます。再現率が上がり適合率が下がります。線を上げると確実なものだけを選び出すので空振りが減り、見逃しが増えます。
だから「適合率が何パーセントのモデル」という言い方は半分の情報しか持っていません。どの線で切ったときの話かが一緒にないといけないし、その線を動かしながら二つの値がどう動くかを曲線で描いて初めてモデルの本当の実力が見えます。
どちらが痛いかが基準
二つの値のどちらを高くするかは技術ではなく状況が決めます。
見逃すと大きく危険なことでは再現率を優先します。空振りは人がもう一度確認すれば済みますが、見逃したものは誰も見直さないからです。危険物の検査や設備故障の兆候探しがここに入ります。
反対に選び出したもの一つひとつに人の手が多くかかることでは適合率を優先します。空振りが増えると担当者が疲れて、あとで警告をまるごと無視するようになるからです。迷惑メールのふるい分けや文書の山から必要なものだけを選び出す仕事がそれです。
一つの画面に二つの数字を並べる
だから評価表には二つを並べて書きます。片方だけ書かれた表は、もう片方が崩れているかもしれないという意味に読みます。
二つを一つの数字にまとめて見たいときに使うのがF1スコアです。ただしまとめた瞬間、どちらが低くてその点数になったのかは見えなくなるので、まとめた点数と元の二つの値を一緒に置いておくほうが良いです。
種類が複数あれば種類ごとに測る
分ける種類が三つ以上あるときは、二つの値を種類ごとに別々に計算します。ある種類はよく見つけ、ある種類はほとんど見つけられないことがよくありますが、全体の平均一つだけを見るとその差が埋もれます。
とくに資料に少ししか入っていない種類ほど再現率が低く出やすいです。種類ごとの表を広げて、いちばん低い行から見る習慣が役立ちます。
3もう少し正確に
二つの値は四つの判定結果から出てきます。本物で正しく選び出したもの、本物ではないのに選び出したもの、本物なのに見逃したもの、本物でもなく選びもしなかったもの。適合率は正しく選び出したものを選び出したもの全体で割り、再現率は正しく選び出したものを実際の本物全体で割ります。この四つのマスを表にまとめたものが混同行列です。
切る線を少しずつ動かしながら二つの値をつないで描くと適合率・再現率曲線になり、曲線の下の面積でモデルどうしを比べることもあります。片方がとても少ない資料では、この曲線が正解率よりずっと正直な絵を見せてくれます。
たとえがずれる点が一つあります。金属探知機のゲートはピーッと鳴ったかばんだけ開ければ適合率がすぐわかりますが、再現率は静かに通り過ぎたかばんまで全部開けて初めてわかります。実際の評価でも見逃したものを数えるには、すべての資料の本当の答えをあらかじめそろえておく必要があります。再現率が適合率より測りにくい理由です。
4やってみる
5よくある誤解
適合率が高ければよく見つけていると思われがちですが、実際には確実な数個だけを選び出して残りを全部見逃しても適合率は高く出ます。
二つの値を同時に100パーセントまで上げられると思われがちですが、実際には判定線を動かすと片方が上がればもう片方が下がる関係です。
適合率は正解率の別の呼び方だと思われがちですが、実際には正解率は全判定のうち当たった割合で、適合率は選び出したものの中で本物である割合なので、下に敷く束からして違います。
7ひとこと要約
つまり適合率は選び出した中の本物の割合、再現率は本物の中で見つけ出した割合で、判定線を動かすと二つはシーソーのように反対に動きます。
誤りや、もっと良いたとえがありますか? 修正を提案する · 最終更新2026-09-02